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虚弱フリーランスの方法論

第12回 SNSでの不調投稿は戦略的に

 病気や障害を抱える「虚弱」だから、安定した労働を提供する被雇用者ではなくフリーランスになるほかない。フリーランスでたくさん稼ぐには、積極的に人と交流することのできる健康が必要。一見矛盾するこの状況のなかでどのように生きていくか――。誰かとつながることが苦手でマイノリティ属性をもつからこそ人とつながることを避けて通れない、という逆説的現状に一石を投じた著書『マイノリティの「つながらない権利」』で話題を集めた気鋭の著者・雁屋優さんが、ご自身の経験をもとに「虚弱」な人がフリーランスとして生きていくための実践的方法論を提案します。【毎月第1・第3・第5火曜日更新予定】


 虚弱フリーランスの抱える大きな課題の一つに不調の上手な表明がある。これは時に不調そのものより重い課題になりうる。健康な人は「不調なんてイメージダウンにつながるから言うべきではない」と思うかもしれないが、それは不調がめったにない人の処世術だ。不調がデフォルトといっても過言ではない虚弱フリーランスがそれをやるのは推奨しない。なぜなら、SNSで実際の自分とかけ離れたフリーランス像を作ってしまったつけは結局自分の体調にやってくるからだ。無理は必ず体調に返ってくる。ひどく残酷で避けられない現実だ。

 とはいえ、ありのまま不調をSNSに綴ればいいわけでもない。フリーランスのSNSは仕事の告知や宣伝、人となりやできることを知ってもらい、新たな仕事につなげるための営業ツールなのだ。SNSはあなたの不調日記ではない。

 そこで立ち返るべきは、あなたはどんな人であると思われたいのか、どんなクライアントと仕事をしたいのか、という根本的な問いだ。健康で迅速に対応できると思われるのは虚弱フリーランスが避けるべき事態だ。しかし、その先の温度感は自分で設計しなければならない。

 私はアルビノ(眼皮膚白皮症)や自閉スペクトラム、うつ病を公表してこれまで書いてきたが、虚弱フリーランスが皆虚弱さや病名を明かすべきとは思っていない。発達障害や精神疾患への偏見はフリーランスにも降り注ぐものだ。また、虚弱をやる気のなさと結びつける偏見や、特定の疾患を詐病や気のせい扱いする向きも依然として存在している。直接そんな発言を向けられなくても、虚弱や病名の公表によって失注するリスクはある。ゼロではないどころか、確実に存在する。

 実際には虚弱だが、虚弱を匂わせないSNS戦略も一つの手法としてある。しかし、私はそれを推奨しない。虚弱や病名を入れなくても、それとなく自分のペースやあり方を表明する方法はある。

◇ ◇ ◇

 私は基本的に以下のルールでSNSを運用している。

・リアルタイムで不調を投稿しない。(不調に引きずられて冷静さを欠いた投稿をしてしまうリスクがある。)

・不調の深刻さを編集して受け取られ方を調整する。(あくまで編集、嘘はつかない。)

・納期への弱音を吐かない。(それはクライアントと直接話すべき内容だ。)

・納期を守れたことをさりげなく示していく。

・不調のすべてを表明しない。実際の不調5回のうち3回程度にとどめて投稿。

・長期療養を要する場合やドクターストップが出た場合は正直に状況を書く。

・SNSを見ている人が知りたいのは自分の苦痛ではなく、仕事ができる状況か、納期が守れるかなどあくまで仕事ベースとの前提で投稿内容を調整する。

◇ ◇ ◇

 なぜ私が虚弱さを上手に表明しながらやっていくことを推奨するのか。それは、過去の経験から無理して隠して仕事を得ても続かないと痛感しているからだ。

 就職活動をした数か月を通して、理不尽な社会規範とどう折り合いをつけるか、あるいはつけないかを日々問われた。就職活動は選考されるだけではなく、自分がどこに行きたいかを示す活動でもあるのだ。アルビノゆえに色素の薄い髪を黒染めするか、リクルートスーツはパンツスタイルかスカートスタイルか、など、あらゆるところで選択が無限に生じる。私はそれらに対し、続けられる形にすると決めた。黒染めを続けられるほど自分はまめではなく、パンツスタイルでなければ寒くて冬はやっていられない。そのせいかは知らないが、内定は取れなかった。しかし、ミスマッチも起こらなかった。容姿を理由に不当な扱いをする場所に就職する悲劇は防げたのだ。就活の最大の失敗は内定が取れないことではなく、ミスマッチだ。合わないところへ行って心身を壊す以上の損害はない。

 短期的に受注することでもなく、いい印象を残すことでもなく、一番大事なのは、無理なく続けられるかだ。体調を今以上に損なわずにフリーランスを続けるために、不調を上手く伝え自分にできるやり方を構築していく。

◇ ◇ ◇

 これを書いていて、虚弱フリーランスの戦略に合理的配慮の申請や建設的対話のやり方が応用できる可能性に気づいた。受注が確定しているわけではないフリーランスと、法的に合理的配慮を受けられるとされている各種サービスでは勝手が違う。しかし、自分のできることやできないことを適切にアピールし、必要な配慮を相手の過重な負担にならないように提案したりすり合わせたりする過程は虚弱フリーランスの仕事風景にも必要なものだ。

 相手にできることも限りがあるし、相手が自分に求める業務の本質も考えなければならない。相手にとって何が重要か、何であれば変えられるか、それを見極める思考や交渉が欠かせない。

◇ ◇ ◇

 ありのまま虚弱を語ると差別されるこの社会は、あまりに理不尽だ。社会が不調を許さない構造をしているのは正すべきだ。そこに異論はない。

 だが、フリーランスとしてビジネスを行うのであれば、話は別だ。良くも悪くも、クライアントや同業者が知りたいのはあなたの体調やあなた自身ではない。あなたが何を提供できるかだ。私はそこに希望を見た。週5日の通勤ができなかろうと、私が不調に悩まされていようと、ただ成果物が納品されればクライアントはそれでいい。私の容姿がどうであろうと、成果物の出来しか気にされない。

 ビジネスの世界のあり方を冷たいと感じる人も少なくないだろう。しかし、曖昧かつ理不尽な社会規範で細かく評価されてきた私には、フリーランスとして得られる評価や成果物のみを見るあり方が救いとなった。私が誰であるかではなく、私の成果物を見てくれる場所を見つけたのだ。

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著者略歴

  1. 雁屋 優(かりや・ゆう)

    文筆業/研究者志望。主に医療・科学領域で研究や執筆を行う。
    茨城大学理学部卒業。北海道大学COSTEP(科学技術コミュニケーター養成プログラム)修了。
    単著『マイノリティの「つながらない権利」』(明石書店、2025年)ほか、論考「家族をつくる選択肢を緩やかに確実に奪う構造の解剖:障害者グループホームの制度設計から見る優生思想」(『季刊福祉労働176号』現代書館、2024年)や『障害のある10代のための困りごと解決ハンドブック』への寄稿などがある。

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