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虚弱フリーランスの方法論

第7回 高収入は夢と割り切る/ストックを作る

 病気や障害を抱える「虚弱」だから、安定した労働を提供する被雇用者ではなくフリーランスになるほかない。フリーランスでたくさん稼ぐには、積極的に人と交流することのできる健康が必要。一見矛盾するこの状況のなかでどのように生きていくか――。誰かとつながることが苦手でマイノリティ属性をもつからこそ人とつながることを避けて通れない、という逆説的現状に一石を投じた著書『マイノリティの「つながらない権利」』で話題を集めた気鋭の著者・雁屋優さんが、ご自身の経験をもとに「虚弱」な人がフリーランスとして生きていくための実践的方法論を提案します。【毎月第1・第3・第5火曜日更新予定】


 さて、これから虚弱なままフリーランスをやっていく。その前に、大切なブレーキとリスク軽減策を提示したい。

 

 ブレーキは高収入は夢と割り切ることだ。

 あまりに夢のない話だが、虚弱なままフリーランスをやっていくならば高収入は夢と割り切って、一旦諦めなければならない。具体的に言えば、社会保障などを含めた上で350万円程度を稼げれば余裕もあり上々だが難しいだろう、くらいの認識が妥当と私は考えている。この額の根拠は、20歳前傷病で障害年金を受給している場合に課される所得制限が前年の本人の所得376万1,001円以上(扶養親族なしのケース)から生じるところにある。

 なお、実際の障害基礎年金の所得制限では障害年金は収入とみなされない。20歳前傷病の障害年金の所得制限、つまり一定以上収入があれば障害年金の支給が段階的に停止される制度は障害年金の理念が障害によって生じる不利益への補償と考えるなら不当でしかない。その上、障害年金の所得制限で基準とする額は、物価高騰や障害による不利益を考慮しているとは到底思えないほど低い。障害年金の所得制限は今すぐにでも撤廃すべき制度の一つだ。

 しかし、障害基礎年金の所得制限の額は虚弱なままフリーランスをする際に目標とする上限には適している。虚弱なままフリーランスでこれ以上の額を稼ぐのは無理がある。一般的に高収入と言われ始める年収600~700万円を虚弱なまま目指すのは無理筋だ。なぜなら日本でこれほどの収入を稼ぐには、かなりの時間や負荷が必要になってくるからだ。それは虚弱な人々にはできないことだ。虚弱なまま物量や速度、負荷の大きさで勝負してはいけない。虚弱フリーランスの方法論の目的は高収入ではなく、自分の健康を削らずに無理なく生活するための収入を得ることだ。社会や健康な人の基準ではなく、虚弱な人に合わせた基準を自分で作る必要がある。私が提示した社会保障も含めて年収350万円程度という額も参考でしかない。あなたにはあなたの望む生活や使える時間の上限、得られる支援など個別の事情がある。

 いくらあれば生活できるか、余裕が出るにはどれくらいか、と一人で考える必要はない。生成AIの手を借りてもいいしインターネット上のテンプレートをダウンロードして使ってもいい。生成AIに自分の状況や目指す生活、大切にしたいことを入力して、必要な収入やその構成を聞くのもおすすめだ。

 考慮すべきものの例を下記に示す。

 

  1. 現在の収入(社会保障、給与、報酬など)
  2. 現在の固定支出(住居費、水道光熱費、通信費など)
  3. 現在の変動支出(食費、娯楽費、医療費など)
  4. 不動産や有価証券などの資産状況
  5. 将来設計(これからも同じところに住み続けるか、家族の増減の予定など)
  6. 現在自分が得ている社会保障のステータス(障害者手帳、自立支援医療など)
  7. フリーランスとして見込める収入、自分の目標

 

 また、目指す暮らしによっても目標収入は変わる。そうしたことを考えた結果、家賃の安いところに引っ越したり障害者手帳を申請したりする必要も出てくるかもしれない。目標収入を適切かつ明確にした方が無理なくフリーランスをやれる。一般的な基準を日々見せ続けられても、自分の基準を持っていれば無理して削れるリスクを減らせる。

◇ ◇ ◇

 高収入は夢としても、無理なく働き続けるためには経済基盤が欲しいのも本音だろう。そのためにストックとなる商品を作るのがいい。

 例えば、noteの有料マガジンや有料記事、Kindleや有料音声コンテンツなど、今現在のあなたが手を動かす必要がなく、置いておくだけで収入になる商品を作るのだ。そうすれば、大きく調子を崩しても収入がゼロになるリスクを減らせる。すぐに売れるとは限らない。でもそれは後からでも売れる可能性を示している。ストックとなる商品があれば必ず安心なんてことはない。しかし少しずつ積み上げたストック(有料無料を問わない)は目先の金額以外の利益にもつながる。発注者に見つけてもらうきっかけや、新たな顧客との出会いになる可能性を秘めている。

 私の場合は書籍の重版印税もこれにあたる。初版のときには書き終えて書籍化作業も完了しての入金なのだが、重版すると別の仕事を進めながら以前の書籍の印税を受け取れる。著者として重版が嬉しくてたまらないのはもちろんだが、経済的な意味でも重版には助けられている。

 ストックを作るまでが大変なのもその通りだ。なので、自分のなかでペースを決めて時間や締切を決めストックを作るのが大切だ。著書を書き上げるように目の前の仕事がストックになっていくケースもあるが、基本的にストックは自主的に作っておくものだ。

◇ ◇ ◇

 高収入は夢と割り切ることをブレーキにし、そしてストックを作ってリスクを減らす。これらは健康を害さずに働き続けるための虚弱な人独特の備えといえる。

 さて、準備はここまでにして、次からはどう動いていくか実践の話に移る。自分を削らず、無理なく、虚弱なままフリーランスを続ける実践だ。

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著者略歴

  1. 雁屋 優(かりや・ゆう)

    文筆業/研究者志望。主に医療・科学領域で研究や執筆を行う。
    茨城大学理学部卒業。北海道大学COSTEP(科学技術コミュニケーター養成プログラム)修了。
    単著『マイノリティの「つながらない権利」』(明石書店、2025年)ほか、論考「家族をつくる選択肢を緩やかに確実に奪う構造の解剖:障害者グループホームの制度設計から見る優生思想」(『季刊福祉労働176号』現代書館、2024年)や『障害のある10代のための困りごと解決ハンドブック』への寄稿などがある。

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