第9回 おしながきやポートフォリオは定期的に更新
病気や障害を抱える「虚弱」だから、安定した労働を提供する被雇用者ではなくフリーランスになるほかない。フリーランスでたくさん稼ぐには、積極的に人と交流することのできる健康が必要。一見矛盾するこの状況のなかでどのように生きていくか――。誰かとつながることが苦手でマイノリティ属性をもつからこそ人とつながることを避けて通れない、という逆説的現状に一石を投じた著書『マイノリティの「つながらない権利」』で話題を集めた気鋭の著者・雁屋優さんが、ご自身の経験をもとに「虚弱」な人がフリーランスとして生きていくための実践的方法論を提案します。【毎月第1・第3・第5火曜日更新予定】
サンプルや成果物とともに欠かせないのが、おしながき(事業内容や料金表)やこれまでの成果物をまとめたポートフォリオだ。おしながきもポートフォリオも作って終わりではない。更新しなければならない。この点については自戒も込めて書いている。一応3か月~半年、何かの機会に更新するよう心がけてはいるが、忙しいとそれどころではなくなってしまう。もちろん、最優先は目の前の仕事なので、ある程度遅れるのは仕方ない。しかし、そのまま放置しているとせっかくのおしながきやポートフォリオも廃墟に見えてしまう。
理想を言えば新しい成果物が出たら更新したいところだ。だが、虚弱にそんな元気があるわけがない。より正確には、そんな元気がある想定でスケジュールを組むべきではない。だいたいいつも元気はないと思おう。エネルギーは常に枯渇している。
厳しいことに、社会は虚弱向けにできていない。虚弱なフリーランスも、虚弱を考慮してもらえる方が珍しい。まして、関係性ができる前、何も事情を知らない状況ではなおのことだ。
更新が少ないおしながきやポートフォリオは、よくないイメージにつながってしまう。もう仕事は受注していないのだろうか。とんでもなく多忙なのだろうか。まめに更新できない人なのだろうか。このようなイメージを抱かれると、静かに失注してしまうリスクが高まる。直接指摘される機会もなく、静かにチャンスを失うのだ。怖い話だ。
目の前の仕事を最優先にしつつ、おしながきやポートフォリオを1年以上更新なく放置しない。虚弱フリーランスが目指すおしながきやポートフォリオの更新頻度は、現実的にはこれが最低ラインだ。
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ではどのようにこの更新頻度を実現するのか。いくつか方法が考えられる。年末年始、ゴールデンウイーク、お盆、シルバーウイークなどの長めの連休に手が空く働き方なら、そのときに数か月分の振り返りをしつつ更新するのがいい。長めの連休が決まっていなかったり忙しさに波があったりする働き方の場合は、数か月おきに更新をタスクとして設定してリソースを確保しておくのもおすすめだ。
1年以上放置しないのが目標なのに、数か月おきに更新を設定するのはなぜか。虚弱だからだ。予定した通りに更新できるとは限らない。不調や不測の事態が生じたとき、目の前の仕事を最優先にした結果、おしながきやポートフォリオの更新は後回しになり、先延ばしになるだろう。予定通り更新できればいいイメージにつながり、不調で更新が遅れても1年以上放置してしまうほどにはなりにくい。
この辺は自分の体調や働き方に合わせて、毎月やおきなど、自分にほどよい頻度を設定する。毎回必ず更新できなくても焦らなくてすむようにするのだ。更新の頻度は3か月以内に設定し、1年以上更新なく放置しない最低ラインを守る。
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まとめ直す必要のないポートフォリオを使うのも手だ。普段の成果物公開がそのまま、あるいは簡単な操作でポートフォリオになってくれる形のものだ。pixivやXforio(クロスフォリオ)はそのような使い方ができる。
どうしてもおしながきやポートフォリオの更新が難しいときもあるだろう。そのようなときは公式SNSで都度情報を出す、しばらく忙しい、更新ができないなどのことを表明する。更新が続いているに越したことはない。更新が難しいとしても、この事業は今も続いているのだとSNS投稿で示すことだけはやるのが大切だ。SNSにこうしたことを書くときは、期限を示すのが大事だ。「しばらく休みます」ではなく、「○月末までお休みします。今後の活動については○月までにお知らせします」の方が発注を検討している側も予定を立てやすい。
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事業を続けている、終わりにする気はない、新しいお仕事も歓迎です、と示すのがおしながきやポートフォリオの更新頻度なのだ。前回もふれたように、積極的にあれもこれもとチャンスを取りに行く元気は虚弱にはない。そんな元気はない前提で戦略を考える必要がある。つまり無理なくできることをやり、機会を失わない。コストはできるだけ少なくして着実に堅実にチャンスをつかむ。そのためのおしながきやポートフォリオ、そして更新だ。
自分に合った更新頻度、方法、ツールを試行錯誤して、無理なく更新を続けられる形でおしながきやポートフォリオを用意しておこう。それが思いもよらないチャンスのきっかけになったり、あなたの名刺になったりする。どんな形でも基礎はしっかり作っておこう。
