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エリア・スタディーズ200巻突破記念連載 「わたしとエリア・スタディーズ」

甘酸っぱいエリア・スタディーズ(小宮理奈)

世界の国と人を知るための知的ガイド〈エリア・スタディーズ〉シリーズがおかげさまで遂に200巻を突破しました!

この節目を記念して始まった連載「わたしとエリア・スタディーズ」では、 〈エリア・スタディーズ〉に触発され、さまざまな研究を行う若手研究者たちの経験やエピソードを紹介しています。〈エリア・スタディーズ〉が探求する多様なテーマに関連する体験や研究の裏話、そして〈エリア・スタディーズ〉を通じて感じたインスピレーションに焦点を当て、シリーズに寄せるメッセージをお届けします。

第9回はさまざまな国を渡り歩き、難民支援の活動をしていた小宮理奈さんに、本シリーズの長所とご自身が体験した切ない一幕について語っていただきました。

 

私は現在、東京都立大学の博士後期課程に在籍し、人類学の視点から難民研究を行っている。しかし、私はもともと実務家で、主として難民支援に10年ほど従事してきた。様々な機関で働き、駐在した国はウガンダ、ケニア、タンザニア、ヨルダン、バングラデシュと多岐にわたる。国際協力のキャリアでは、数年ごとに所属機関や赴任地が変わることが一般的であり、私も数年(あるいは数ヶ月)ごとに住む国を変えていた。一定期間ひとつの国に住んだところで、現地の言葉を理解しない外国人にとって、その国のことを理解するのは難しい。インターネットで調べてみても、日本人にとって、あるいは旅行者にとって馴染みのない国である場合、得られる情報は少ない。また、得られたとしても、人気観光スポットの情報のみということが多々ある。

タンザニアの調査地のひとつ、難民キャンプ近くの町カスルの市場(筆者撮影)

 

このような悩みに応えてくれるのが本シリーズである。各章は専門家が書いているので詳しい記述があるものの、専門書より短く平易である。そのため、気軽に読み進められる。実のところ私は、赴任する国に関する入門書として本シリーズに何度も助けられてきた。難民認定審査にかかわっていたので、赴任国の巻だけでなく、難民の出身国であるアフガニスタンやクルド人の巻も役立った。各章は読み切りになっており、気になるトピックだけ読めるという点もありがたい。お気に入りの章を見つけ、著者の本を購入したこともある。また、研究者だけでなく、実務家や、時には芸術家が執筆しているものも興味深い。

もっとも、本シリーズには切ない思い出もある。新しいポストに応募する際も、私は面接対策として、本シリーズにおける当該国の巻を読んでいた。しかし、すべての国と縁ができたわけではない。本棚にある当該巻の背表紙を見ると、落ちた面接を思い出し、胸が締め付けられる。「早く行ってみたい」と目を輝かせながら読んでいただけに、当時は相当落ち込んだ。もちろん本に罪はない。むしろ、その本が魅力的だったため、期待感が大きく膨らんだのである。

それはともかく、一愛読者として不思議なのは、未だにヨルダンが本シリーズに登場していないことである。私が2年間住んだ国なので、いつ刊行されるかと首を長くして待っている。そして、今はまだ研究者として半人前の私だが、いつか本シリーズに寄稿したいと夢見ている。若手研究者の「憧れのシリーズ」として、これからも巻を増やしてほしい。

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著者略歴

  1. 小宮理奈(こみや・りな)

    東京都立大学博士後期課程在籍(社会人類学専攻)。日本学術振興会特別研究員 (DC1)。これまで国連や国際NGO、財団に勤務し、日本、ウガンダ、ケニア、タンザニア、ヨルダン、バングラデシュにて国際協力や難民保護に携わる。早稲田大学法学部卒、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスとオックスフォード大学にて修士号(それぞれ、人権学と国際人権法)を取得。現在は、タンザニアからアメリカに再定住したコンゴ難民の研究と日本におけるムスリム移民の研究を行っている。

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