はじめに(娘の不登校から見た日本の学校や社会のあれやこれや)
不登校になった経緯や状況、その後の歩みは一人ひとり違い、2つと同じストーリーはありません。ですから、この連載で書いていく話は、不登校を含め約46万人いる長期欠席者うちの一人とその家族のストーリーに過ぎません。
一方で、誰一人として学校や社会のあり方と無縁に不登校を経験する人も、また、いません。今から22年近く前、不登校からひきこもりになり、自宅を中心とした生活を送る若者と、私は初めて出会いました。それから、今まで多くの不登校を経験している子どもや、経験した若者と出会って、共に時間を過ごしてきました。そして、その傍で、こうした子ども・若者やその家族から見える学校や社会の風景を一緒に見つめようとしてきました。そこには、今の子ども・若者やその親たち、家族たちを取り巻く環境や、学校のみならず社会全体のありようが、必ず見えてきます。
その意味で、この連載で書いていくのは46万分の1のストーリーだけれど、私たち家族の見ている風景を通じて、きっとその向こうに社会の問題が見え、他の不登校のお子さんや家族に通じる困難が見えてくるのではないかと思っています。
私たちのストーリーを通じて、学校に行きづらいと感じていたり、不登校のお子さんがいる家族や社会全体が、不登校は家族だけで抱えこまなくて良い、学校にこだわらなくても良い、そんな気持ちになってもらえたら嬉しいです。そして、一人でも多くの人が、今の子どもたちの置かれた環境を知り、不登校を理解し、すべての子どもにとって生きやすい、育ちやすい学校や社会の環境を少しでも願うようになってもらえたらと思います。