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娘の不登校から見た日本の学校や社会のあれやこれや——子ども・若者支援の専門家が20年目に当事者になった話

はじめに(娘の不登校から見た日本の学校や社会のあれやこれや)

不登校になった経緯や状況、その後の歩みは一人ひとり違い、2つと同じストーリーはありません。ですから、この連載で書いていく話は、不登校を含め約46万人いる長期欠席者うちの一人とその家族のストーリーに過ぎません。

一方で、誰一人として学校や社会のあり方と無縁に不登校を経験する人も、また、いません。今から22年近く前、不登校からひきこもりになり、自宅を中心とした生活を送る若者と、私は初めて出会いました。それから、今まで多くの不登校を経験している子どもや、経験した若者と出会って、共に時間を過ごしてきました。そして、その傍で、こうした子ども・若者やその家族から見える学校や社会の風景を一緒に見つめようとしてきました。そこには、今の子ども・若者やその親たち、家族たちを取り巻く環境や、学校のみならず社会全体のありようが、必ず見えてきます。

その意味で、この連載で書いていくのは46万分の1のストーリーだけれど、私たち家族の見ている風景を通じて、きっとその向こうに社会の問題が見え、他の不登校のお子さんや家族に通じる困難が見えてくるのではないかと思っています。

私たちのストーリーを通じて、学校に行きづらいと感じていたり、不登校のお子さんがいる家族や社会全体が、不登校は家族だけで抱えこまなくて良い、学校にこだわらなくても良い、そんな気持ちになってもらえたら嬉しいです。そして、一人でも多くの人が、今の子どもたちの置かれた環境を知り、不登校を理解し、すべての子どもにとって生きやすい、育ちやすい学校や社会の環境を少しでも願うようになってもらえたらと思います。

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著者略歴

  1. 鈴木 晶子(すずき・あきこ)

    NPO法人パノラマ理事、認定NPO法人フリースペースたまりば事務局次長・理事、一般社団法人生活困窮者自立支援全国ネットワーク研修委員。臨床心理士。
    1977年神奈川県に生まれ、幼少期を伊豆七島神津島で過ごす。大学院在学中の2002年よりひきこもりの若者の訪問、居場所活動に関わり、若者就労支援機関の施設長などを経て2011年一般社団法人インクルージョンネットかながわの設立に参画、代表理事も務めた。その傍らNPO法人パノラマ、一社)生活困窮者自立支援全国ネットワークの設立に参画。専門職として、スクールソーシャルワーカーや、風俗店で働く女性の相談支援「風テラス」相談員なども経験。内閣府「パーソナル・サポート・サービス検討委員会」構成員、厚生労働省「新たな自殺総合対策大綱の在り方に関する検討会」構成員等を歴任。2017年に渡米。現地の日系人支援団体にて食料支援のプログラムディレクター、理事を務めた。2020年帰国。現職。著書に『シングル女性の貧困――非正規職女性の仕事・暮らしと社会的支援』(共編著、明石書店、2017年)、『子どもの貧困と地域の連携・協働――〈学校とのつながり〉から考える支援』(共編著、明石書店、2019年)他。

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