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「須賀敦子の再来」とも言われる関口涼子氏の「震災三部作」を翻訳・刊行


「須賀敦子の再来」とも言われる関口涼子氏の「震災三部作」を翻訳・刊行

フランスで刊行され絶賛された「震災三部作」を一冊にまとめ邦訳

関口涼子『カタストロフ前夜ーーパリで3・11を経験すること』

2020年3月11日発売!


わたしに触れる
声の亡霊たち

世界で日々起きている破局的な出来事。その狭間を自分も生きているのだと、不意に気づかされることがある。身近な人の大切な時に立ち会えなかった作家に大震災がもたらした、生者と死者とを結ぶ思想。フランスで絶賛された震災三部作を一冊にまとめた邦訳版。

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このたび株式会社明石書店は、東日本大震災から9年となる3月11日に関口涼子著『カタストロフ前夜――パリで3・11を経験すること』を刊行いたします。

新刊:関口涼子『カタストロフ前夜――パリで3・11を経験すること』
https://www.akashi.co.jp/book/b498645.html

世界で日々起きている破局的な出来事。その狭間を自分も生きているのだと、不意に気づかされることがある。身近な人の大切な時に立ち会えなかった作家に大震災がもたらした、生者と死者とを結ぶ思想。フランスで絶賛された震災三部作を一冊にまとめた邦訳版。


著者は、フランスで谷崎潤一郎や多和田葉子など数多くの日本文学の仏語訳を送り出してきました。その功績により、2012年にフランス政府から芸術文化勲章シュヴァリエを受賞しています。一方、日本ではウエルベックやなど海外文学の翻訳家として高い評価を得てきました。パトリック・シャモワゾーの『素晴らしきソリボ』は2016年に日本翻訳大賞を受賞しています。

そのようにして文章力を高く評価され、東日本大震災以前は詩集も複数刊行していた著者ですが、作家としては震災以降、散文の執筆に移り、単著ではフランスを拠点に仏語で出版活動を続けてきました。本書はその中で著者が「震災三部作」と呼ぶ、「これは偶然ではない」「声は現れる」「亡霊食」をあわせたものです。

一作目の「これは偶然ではない」は3・11の前日、2011年3月10日から4月30日までに起きた出来事とそれに纏わる思考を日記形式で断片的に綴った作品で、同年にフランスで刊行されました。日本の東北地方から遠く離れたパリで東日本大震災の報を聞いた著者は、本書でこの出来事との地理的な距離そのものを主題化しています。

二作目の「声は現れる」には、震災に関する直接の言及はありません。しかしながら、かつて亡くなったご家族との精神的なつながりを「電話の声」という媒体を通じて捉え返していく過程は、3・11で出来事あるいは被災者との距離を考え続けてきた著者の内的なプロセスの延長線上にあるものです。「身近な人の大切な時に立ち会えなかった作家に大震災がもたらした、生者と死者とを結ぶ思想」は、この作品を通じて生まれました。

三作目の「亡霊食」は、食をめぐるユニークなエッセイです。通常、食べものは名前、形、生まれた土地をもちますが、雲、煙、蒸気、さらには土地や象徴を味わう時のように対象が抽象性を増していくと、その輪郭は徐々にぼやけていきます。ここまでは著者の筆致はユーモラスなのですが、著者はやがて、より亡霊的な食べもの、そしてそれによってより亡霊的になった人間の生という、原発事故後をめぐる独創的なテーマに踏み込んでいきます。

パリという視角から問いかける「震災三部作」を通じて、みなさまご自身の3・11を想起していただければ幸いです。

【目次】
これは偶然ではない
声は現れる
亡霊食――はかない食べものについての実践的マニュアル
あとがき

【「あとがき」より】
世界の至る所でカタストロフは毎日のように起きていて、わたしたちが当事者ではないためにそれを意識していないだけなのです。もっと身近に感じ、行動を取り支援をすべきなのに、想像力に欠けているがゆえに見落としているカタストロフがあります。すでに起きたカタストロフを踏まえた対策を取らないがゆえに、次のカタストロフ前夜の到来を早めてしまう場合も。震災や紛争の爪痕を忘れないため、カタストロフ前夜を呼び込まないための、これは警告としてのタイトルでもあります。

【フランス紙レビュー】
――「これは偶然ではない」
「彼女の思索は明晰で妥協がない。その物語は力強い。これは同時に、書くことをめぐっての本でもある」(『リール』紙)

――「声は現れる」
「死が近い人の声の響きについての彼女の描写は、その詩的な真実の輝きで私たちの心を揺さぶる。(中略)軽やかに、繊細にしかし深刻なテーマに触れつつ、(中略)、彼女は常に親密でありつつ普遍的なものに触れることに成功している。声の陰翳礼讃」(『ル・マガジン・リテレール』誌、ピエール・アスーリン〔作家〕)

――「亡霊食」
「「亡霊食」は、食べものの隠された世界、その不安な面だけでなく、光に満ちた面についても語る本であり、詩的な世界が最も強く残っている。これは人生を変える本だ。人生が変わっても驚いてはいけない。本来、あらゆる本はそうあるべきなのだ」(マルタン・パージュ〔作家〕)

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著者略歴

  1. 関口涼子

    1970年生まれ。著述家・翻訳家。東京都新宿区生まれ。1988年、高校3年生にして第26回現代詩手帖賞受賞。1993年、詩集『カシオペア・ペカ』を刊行。1996年、東京大学総合文化研究科比較文学比較文化専攻修士課程修了。その後パリに拠点を移し、フランス語で二十数冊の著作、また日本文学や漫画の仏訳等を刊行。2012年フランス政府から芸術文化勲章シュヴァリエを受章。2013年ローマ賞受賞、ヴィラ・メディチに一年滞在。岡井隆との共著に『注解するもの、翻訳するもの』。訳書にM・ウエルベック『セロトニン』、ダニエル・ヘラー=ローゼン『エコラリアス』、P・シャモワゾー『素晴らしきソリボ』(日本翻訳大賞受賞)など。

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