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20世紀最大の哲学者はなぜナチスに加担したのか?


20世紀最大の哲学者はなぜナチスに加担したのか? 

「ハイデガー・ナチズム論」の決定版

『ハイデガーの超-政治――ナチズムとの対決/存在・技術・国家への問い』

2020年2月25日 発売! 


 

このたび、株式会社明石書店は、ハイデガー研究の第一人者として知られる轟孝夫氏がハイデガーのナチス加担問題を正面から取り上げる『ハイデガーの超-政治――ナチズムとの対決/存在・技術・国家への問い』を2月25日に発売いたします。

 

*      *      *

主著『存在と時間』(1927年刊)で世界的な名声を手に入れ、今日の日本でも西洋の哲学者としては一、二を争う人気を誇るマルティン・ハイデガー。しかし彼は1933年にナチスが政権を獲得した直後、ナチス支持者としてフライブルク大学学長に就任したため、彼には「ナチの哲学者」というイメージがつねに付きまとい、彼の哲学もナチズムと親和性もつのではないかと疑われています。2014年に刊行が始まった通称「黒ノート」に反ユダヤ主義的とも見なしうる覚書が見出されたことにより、そのイメージは決定的なものになりました。

しかしハイデガーはまさにその「黒ノート」において、自身の「存在の問い」そのものが独自の政治的含意をもち、自身のナチスへの関与が、ナチスに対して人種主義に代わる真の共同体原理を与える政治的実践=超-政治であることを強調していました。そして学長辞任後は、こうした立場からナチズムを鋭く批判していきました。

本書は、今なお本格的な読解がなされていない「黒ノート」の詳細な検討も交えつつ、ハイデガーを単純にナチと見なして断罪する従来の「ハイデガー・ナチズム論」では見落とされてきた、ハイデガーとナチズムの緊張と対立に満ちた関係を時系列的に丹念に描き出しています。またそのことを通して、ナチズムはもとより、現代の政治のあり方そのものを批判的に照射する、彼の後期の「存在の思索」の政治的含意を浮き彫りにしていきます。

果たして、ハイデガーは本当に単なる「ナチの哲学者」にすぎないのか? 「黒ノート」の「反ユダヤ主義的」だとされる覚書の真意はいかなるものなのか? 本書において著者は、彼のテクストを広範に参照しつつ、これまでの研究では見落とされてきた数々の興味深い事実に光を当て、従来のハイデガー像の抜本的な見直しを迫るスリリングな読解を展開しています。

ハイデガーの後期の思索は秘教的で難解なものとして、一般読者はおろか、研究者によっても敬して遠ざけられてきました。本書はそうした「存在の思索」の意義を、われわれが生きる現代社会の本質を抉り出すものとしてわかりやすく解き明かすことにより、ハイデガー後期哲学の格好の入門書ともなっています。

 

【目次】

序論

第1章 学長期の立場
 第1節 「黒ノート」における超政治
 第2節 学長就任演説「ドイツ大学の自己主張」
 第3節 学長期の労働論
 第4節 学長としての実践とその挫折

第2章 ナチズムとの対決
 第1節 ナチ・イデオロギー批判
 第2節 「黒ノート」における「反ユダヤ主義的」覚書

第3章 技術と国家
 第1節 技術と総動員
 第2節 近代国家に対する批判

第4章 「戦後」の思索
 第1節 ハイデガーの非ナチ化
 第2節 悪についての省察
 第3節 戦後の技術論
 第4節 放下の思索

結論

 あとがき
 参考文献・年譜

 

『ハイデガーの超‐政治』カバーデザイン(右上・帯なし、右下・表紙)

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著者略歴

  1. 轟 孝夫(とどろき・たかお)

    1968年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。
    現在、防衛大学校人間文化学科教授。博士(文学)。
    専門はハイデガー哲学、現象学、近代日本哲学。
    著書に『存在と共同―ハイデガー哲学の構造と展開』(法政大学出版局)、『ハイデガー『存在と時間』入門』(講談社現代新書)などがある。

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